私がまだ若い時にその人に出会えたのは幸運だった。
一代で無数の店を作り成功したカリズマは、
ふだんは人なつこい可愛らしい人で、
でも大柄だし怒リ出すと威圧的なことこの上ないので、
それを恐れずに立ち向かう隙を伺っては、
言いたいことを進言するという難度の高いワザに、
ちょいちょい挑むことが出来たのは後に役に立った。
いつか会いに行こうとずっと思っていながら、それがどうにも叶わなくなることがある。
訃報を偶然に知ることになって、ノートからくたくたになりかけた付箋を外したが、
テープを再現するように、私たちの名を呼ぶ声が耳によみがえる。
もう肉声を聞くことはできないが、
真っ白な髪になってもなお、好奇心であふれるお茶目ぶりを、
20年ゆうに越えた現在でも、絵に描けるほど鮮明に覚えている。